親が認知症になると、銀行口座の引き出しや不動産売却ができなくなります。成年後見制度を使って財産を守る方法を、具体例を交えて説明します。
更新日:2026-04-05
親が認知症と診断されると、本人の判断能力が低下したと見なされます。銀行は「本人が本当に同意しているのか不安」という理由から、口座から大金を引き出させてくれなくなるのです。
例えば、親が月額20万円の介護費用が必要になったとします。認知症がない場合は親本人が銀行で手続きできますが、認知症と診断された後は、子どもが親の代わりに手続きしようとしても、銀行は「本人確認ができない」と拒否することがあります。
このように親の財産が事実上凍結されてしまう状態を避けるために、法的な手続きが必要になるのです。
成年後見制度とは、判断能力が低下した本人(親)に代わって、家庭裁判所から選ばれた後見人が、財産の管理や介護契約などを行う制度です。難しく聞こえますが、簡単に言えば「親の代わりに、法的権限を持つ誰かが親のお金や生活の決定をする仕組み」です。
成年後見制度には2つの種類があります。認知症が軽い場合は「保佐」、中程度の場合は「補助」、重度の場合は「成年後見」として利用できます。
後見人は、親の銀行口座から介護費用を引き出したり、親が住んでいる家を売却したり、介護施設との契約を結んだりできます。子どもが後見人になることもできますが、家庭裁判所が専門家を後見人に選ぶこともあります。
成年後見制度を利用するには、家庭裁判所に申し立てる必要があります。申し立てができるのは、親の子ども、配偶者、兄弟姉妹などの親族です。
手続きの流れは以下の通りです。
①親の住所がある家庭裁判所に申し立て書を提出します(費用は約3,000円)。
②医師の診断書が必要です(診断書作成費は5,000~10,000円)。
③家庭裁判所が申し立ての内容を調査します。
④後見人が決定され、その情報が登記簿に記録されます。
この手続きには通常2~3ヶ月かかります。親が認知症と診断されたら、なるべく早めに動くことが大切です。診断書がまだない場合は、まず医師に相談しましょう。
後見人になると、親のお金を守る重要な責任が生まれます。後見人は親の最善の利益を考えて行動しなければいけません。
具体的には、親が月額15万円の介護施設費用が必要な場合、後見人はその15万円を施設に支払います。ただし、親の貯金が500万円あっても、後見人が勝手にそのお金を使ってはいけません。親のお金は親のものであり、後見人のものではないのです。
後見人は毎年、家庭裁判所に「親の通帳はいくらになったか」「どのように使ったか」という報告書を提出する義務があります。もし不正な使い込みが見つかれば、後見人は責任を問われることもあります。
このルールは厳しいように聞こえますが、親の財産を守るための制度なのです。
子どもが親の後見人になれば、わざわざ専門家に費用を払う必要がありません。親のお金の使途を自分で判断できるので、親の希望に沿った介護や生活を実現しやすくなります。
ただし、注意点もあります。子ども同士で親の財産の使い方について意見が対立する場合、トラブルになることがあります。例えば、長男が後見人で月額20万円の高級老健施設に入居させたいと思っていても、次男は「親の貯金がもったいない」と反対するケースです。
また、子どもが後見人になると、毎年書類作成の手間がかかります。複数の子どもがいる場合は、誰が後見人になるか事前に話し合い、その子どもが他の兄弟姉妹に定期的に報告する体制を整えることが大切です。
実は、親が認知症になる前の「元気なうちに」やっておける対策があります。これを「任意後見制度」といいます。
任意後見は、親がまだ判断能力がある時点で、子どもと契約を結びます。契約の内容は「親が認知症になったら、子どもがお金や生活の決定をすること」です。後で成年後見制度を使う場合よりも、手続きが簡単で、親の希望に沿った決定がしやすくなります。
また、親が元気なうちに「どの銀行のどの口座がいくらあるのか」「重要な書類をどこに保管しているのか」を子どもに教えておくだけでも役に立ちます。親が急に判断能力を失った場合、子どもが親の財産の全体像を把握していないと、対応に時間がかかり、親の医療費や介護費用が支払えなくなることもあります。
A. 親の判断能力が低下したと判断された場合、銀行は本人の同意確認ができないため、口座からの大金引き出しを拒否することがあります。成年後見制度を利用すると、後見人が法的権限を持って引き出せるようになります。
A. 家庭裁判所への申し立て費用は約3,000円、医師の診断書は5,000~10,000円かかります。専門家を後見人にすると毎月2~4万円の報酬が発生しますが、子どもが後見人になれば報酬は不要です。
A. 通常2~3ヶ月かかります。親が認知症と診断されたら、早めに家庭裁判所に申し立てることが大切です。医師の診断書の取得から含めると、準備期間を合わせて1~2ヶ月見ておきましょう。
A. いいえ。後見人は親のお金を親のために使う義務があり、勝手に自分のお金として使ってはいけません。毎年家庭裁判所に報告書を提出する必要があり、不正な使い込みは責任を問われます。
A. 「任意後見制度」を利用することです。親が元気なうちに子どもと契約を結んでおけば、認知症になった後の手続きがスムーズになります。また、親の銀行口座や重要書類の場所を事前に確認しておくことも大切です。
A. 家族会議で決めることをお勧めします。後見人に選ばれた人が毎年書類作成の手間がかかるため、時間に余裕がある人が適任です。他の兄弟姉妹に定期的に親の財産状況を報告し、信頼関係を保つことが重要です。
⚠️ 本記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の状況については、年金事務所・市区町村の窓口・専門家にご相談ください。