自筆証書遺言の正しい作成方法を分かりやすく解説します。必要な要件や書き方のポイント、よくある失敗例を紹介します。
更新日:2026-03-31
遺言書を作成することは、ご自身の最後の意思を家族に伝える大切な手段です。遺言書がないと、法律で決められた相続人が遺産を分けることになりますが、その結果、家族間のトラブルが起こることがあります。
例えば、配偶者と子ども3人がいる場合、法律では配偶者が2分の1、子どもたちが2分の1を分け合うことになります。しかし、「長男に家を譲りたい」「長女に現金をあげたい」といった希望がある場合、遺言書があればそれを実現できます。
60代70代の方は、これからの人生設計を考えるうえで、遺言書の作成を強くお勧めします。
自筆証書遺言とは、自分で手書きして作成する遺言書のことです。公正証書遺言(公証役場で作成するもの)と異なり、費用がほとんどかからず、誰にも知られずに作成できるというメリットがあります。
ただし、自筆証書遺言にはルールが厳密に決められており、ルールを守らないと無効になってしまいます。例えば、パソコンで打った遺言書は認められません。また、日付や署名がないものも無効です。
自筆証書遺言は手軽に作成できますが、後で「この遺言書は本当に有効なのか」という争いが生じないよう、正しい方法で作成することが大切です。
自筆証書遺言が有効になるためには、以下の3つの要件を必ず満たす必要があります。
【1】全文を手書きで作成すること
パソコンで打った文章や、他の人に代筆してもらったものは無効です。ボールペンで、紙に直接手書きする必要があります。鉛筆のように消せるペンは避けてください。
【2】日付を記入すること
「令和8年3月31日」というように、年月日を明確に書きます。「3月吉日」などの曖昧な日付は認められません。
【3】署名と押印をすること
自分の名前を手書きで署名し、実印(登録済みの印鑑)で押印します。認め印でも法的には有効ですが、後のトラブルを避けるため実印をお勧めします。
遺言書の作成手順を説明します。
【準備するもの】
罫線のある便箋(または白い紙)、黒いボールペン、実印、印鑑証明書
【書き方の流れ】
1. 冒頭に「遺言書」と記入します。
2. 「私は以下の通り遺言する」と続けます。
3. 誰に、何を、どの財産をあげるかを具体的に記します。例えば「長男太郎に、○○銀行の預金口座(口座番号××××××)の1,000万円を遺贈する」という風に、誰が読んでも分かるように明確に書きます。
4. 複数の内容がある場合は、番号をつけて区別します。
5. 最後に日付を書き、自分の名前を署名し、実印を押します。
自筆証書遺言でよくある失敗をご紹介します。
【失敗例1】財産の説明が曖昧
「土地をあげる」だけでは、どの土地か分かりません。必ず「○○県△△市の土地(登記簿謄本記載の土地)」というように、具体的に特定できるように書きます。
【失敗例2】訂正方法を間違える
途中で修正する際は、修正した部分に二重線を引き、その上に印鑑を押してください。修正液やテープを使うと無効になる場合があります。
【失敗例3】用紙や文字が小さすぎる
将来、遺言書が本物であることを確認する検認手続きで、文字が読めないと問題になります。大きく、はっきりと書くことをお勧めします。
自筆証書遺言を作成した後は、保管方法が重要です。紛失や改ざんを防ぐため、以下の方法をお勧めします。
【法務局での保管制度】
令和2年から「自筆証書遺言保管制度」が開始されました。作成した自筆証書遺言を法務局に預ける制度で、保管料は1件3,900円です。この方法なら、紛失や改ざんの心配がなく、相続発生時に家庭裁判所の検認が不要になるメリットもあります。
【自宅で保管する場合】
セーフティボックスや金庫に入れ、相続人が見つけやすい場所(例:預金通帳と同じ金庫)に保管することをお勧めします。家族に「どこに保管してあるか」を伝えておくことも大切です。
遺言書を作成する際に気をつけるべきポイントをご紹介します。
【エンディングノートとの違い】
エンディングノート(終活ノート)は、自分の想いや家族への希望を記すものですが、法的な効力がありません。相続財産の分配を決めるなら、必ず遺言書を作成してください。
【複数のページにわたる場合】
遺言書が複数ページになる場合、すべてのページに署名と押印をすることが安全です。
【定期的な見直し】
結婚や離婚、財産の大きな変化があった場合は、遺言書の内容を見直してください。新しい遺言書を作成した場合、古い遺言書は自動的に無効になります。
【専門家への相談】
複雑な相続の場合(複数の不動産がある、事業を継いでいるなど)は、弁護士や司法書士に相談することをお勧めします。
⚠️ 本記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の状況については、年金事務所・市区町村の窓口・専門家にご相談ください。